ミュージックインストラクターズ養成学院

音楽療法士〜資格取得後の奮闘記

第十七回「特別な日」

第十七回特別養護老人ホームでの音楽療法が終わりましたので、アセスメント・プログラム・記録等ご報告させていただきます。

 

[アセスメント]
人数は、53名になります。
施設内の入居の方、ショートステイの方と全体で55名になりますが、今回はご家族様と面会の方が2名いらっしゃった為、53名になります。

そのうち新規利用の方が2名になります。
一名は女性の方で音楽が大好きとのこと。
もう一名は男性の方でパーキンソン病を患っている方で発語が難しい方になります。

そして前列にはいつも来ていただけるファンの方が多くいらっしゃいました。
そのうち第一回目から参加いただいてる、とある女性の方(90歳)が、いつもなら車椅子の参加で来ていただけましたが、今回はリクライニング式の車椅子で来られました。
(記録のところに詳細を書かせていただきます。)

始まりはいつも通りの14時からになります。

 

[プログラム]

 

1.挨拶
はじまりの挨拶

→全体的に声も出されており、はじめからしっかりと「音楽の日」と意識していただ
ける方が多くいらっしゃいました。

 

 

2.準備運動
呼吸法と発声法を実施。
今回の呼吸法では、前回できなかった「紙風船」を全員で使用しました。
発声法では、「エイエイオー!」とお腹を意識して声を出しました。

→呼吸法では、「紙風船」を1人ひとつずつ持っていただき、同時にストローも使用しました。
紙風船を持つと「懐かしいなぁ」「昔よくこうやって遊んだよなぁ」と言った声が多方面から男女問わず聞こえました。
ストローを使い「しっかりと息を吐くこと」を意識して実施しました。
なかなかうまく膨らまない方もしっかりと集中し、スタッフと協力しながらも膨らましていただけました。
5回膨らましていただき、完成したときには「私の方がきれいにできたよ」などの隣同士での会話も見ることができました。

その後の発声法でも、問題なくしっかりと声を出していただけました。
今回も手を上に挙げながらお腹を意識して声を出しました。ここ最近では、しっかりとしたお腹から出している声にもなってきています。

 

 

3.季節の歌
『七夕さま』『夏は来ぬ』を歌唱。
その後、曲の説明、質疑応答しました。

→歌唱は基本的に問題ありませんでした。
2曲どちらもしっかりと後方の方も声が聞こえていました。
質疑応答では、2曲に関する質問をしました。
『夏は来ぬ』では、「卯の花は?」と聞くと「これはおからやね!」と女性の方が言っていただき、それに合わせ近くの方が「卯月の花や!」と教えていただけたりと様々な方が答えていただける形になり、いろいろな方とコミュニケーションもとれるようになりました。
それだけではなく、しっかりと曲を思い出していただき「昔によく唄ったよ」と答えていただける方も少なくはありませんでした。

 

 

4.手遊び歌
『うみ』を歌唱し、その後同時に手遊びも実施しました。
手遊び内容は、施設スタッフ様の要望もあり「手拍子」を入れた手遊びにしました。
内容は、㈰グーチョキパー→手拍子 ㈪グー→手拍子→パー→手拍子 になります。

→歌唱は、季節の歌に引き続き問題はありませんでした。
今回の手遊びは、前回終了後の反省会にて、「手拍子を入れた内容の方が、寝たきりの方の手の反応がよくわかる。」とのことでした。
手拍子含めた内容の方が、スタッフ様曰く、手から伝わる意思疎通がよくわかる、とのことでした。その為今回は手拍子を多く含めた手遊び内容にしました。
寝たきりの方の反応としては、やはり小さいながらに力を入れていただけてることがわかりました。
その他のクライアント様方は特に問題なく、しっかりと指も伸ばして出していただけました。

 

 

5.合奏
『カモメの水兵さん』の曲に合わせ、前の模造紙を見ながら合奏を実施しました。

→合奏の内容はすぐに理解していただき、きれいに揃った合奏になりました。
前回も実施していた合奏でのグループ分けを今回も少しだけ実施しました。
合奏も非常にきれいに揃っており、グループわけの合奏はまだまだ未完成になります。
中にはクライアント様が、他のクライアント様に教える等の様子も確認できました。

 

 

6.懐メロ
『タバコ屋の娘』『あの丘越えて』を歌唱。
事前に曲の情報や時代背景を説明して歌唱に入りました。
そして今回は、「昭和26年」、「美空ひばり」を関連し、本人歌唱曲を2曲聴いていただきました。

→懐メロでは、今回のプログラム内で一番の盛り上がりでした。
『タバコ屋の娘』では笑っていただけたり、『あの丘越えて』では説明時に途中で「鶴田浩二が映画にでてましたよね?」と教えていただき、回想する方もいらっしゃいました。

本人歌唱曲は、『私は街の子』『上海帰りのリル』の2曲を聴いていただきました。
「美空ひばり」に関連した話をした実施後に、『私は街の子』を聴いていただきました。
その時の反応は、ほとんどの方がイントロ部分で「ひばりちゃんの曲の、あの曲!」と必死になり思い出される方や、自ら指揮をとり目を閉じながら一番全てを唄われる方、そして前のめりになって曲を聴かれる方など多くの方が確認できました。
そして、次は「昭和26年」の時代背景を説明し、説明後に『上海帰りのリル』を聴いていただきました。
昭和26年の時代背景を、説明すると「あっ、そんなことあったあった!」と頷かれる方や、「私10歳の時です!」と教えていただける方といらっしゃいました。『上海帰りのリル』は、男性女性問わずほとんどの方が、歌詞を思い出して唄っていただきました。
回想の面では今回は、時間を多くとりましたが非常に効果的になりました。

 

 

7.クールダウン
懐メロ終了後に、少しだけ身体を伸ばし、その後クールダウンの為『夕焼け小焼け』をピアニカにて歌唱し、クールダウンをとり終了しました。

終了は、15時になります。

 

 

[記録・反省]

・呼吸法での紙風船は非常に効果的でした。
前々回の呼吸法に風車を使用したときにもわかりましたが、何か道具を一つ使用するだけで、呼吸をしっかりと出していただける姿が確認できるのはセラピストからして非常に効果が確認し易いものになります。風車、紙風船とその他にも何か「懐かしい」と思っていただける道具を使う呼吸法は、様々な面で効果的になります。
近いうちにまた何か案を用いたいと思います。

・懐メロでは、前回前々回と勉強になった回想時の「時代背景」が効果的になりました。
本人歌唱曲の使用と共に、その時代背景を説明するだけで、クライアント様の反応が著しく変わり、その流れで本人歌唱曲を使用すると非常に深い回想に繋がります。
今回はいつもより長く説明に入りましたが、スタッフ様の確認によると、「ほぼ全員が前のめりになって先生の話を集中して聞いていました。プログラムの後半になってもこんなに集中できることが凄いことです。そこからの曲を聴く姿も普段の利用者様とは思えない反応をしています。」とのことでした。

・アセスメント時に書かせていただきました、ある一名の女性の方の事を書かせていただきます。
その女性は、第一回目から参加していただいてる方になり、いつも書かせていただいてるファンの1人になります。普段は、その方は車椅子の生活になり「毎回楽しみにされている」とスタッフの方によく話を伺います。しっかりと参加をしたいので眼鏡を必ず持ってきたり、始まる30分前から最前列を確保していただいたりといつも楽しみにしていただいてます。

今回、開始10分前になりほとんどの方が順番に誘導していただいてる中、その女性はまだ来られていませんでした。
様々な方とアセスメントをしている最中、リクライニング式の車椅子にて誘導される女性の姿が確認できました。
その方は最前列に誘導していただき意識ははっきりと確認できました。
スタッフの方になぜリクライニング式になったのか伺うと、「転倒をしてしまい、額に怪我をされました。そしてその反動で首にまで怪我をしてしまい、首がうまく動かないということもあり、リクライニング式になりました。なかなか普段より、発語も難しくなります。」と仰っていただき、そのまま最後まで意欲的に参加していただきました。
途中何度も気になりましたが、しっかりと紙風船を膨らましたり、合奏に参加をしていただいたり、歌も唄って説明もしっかりと聞いていただき、何も問題はありませんでした。

終了後、手を握りに女性の元に向かうと、小さな声で「ありがとう、ありがとう」と力強く手を握っていただき感謝していただけました。
近くのスタッフ様にも話を伺うと、「実は、転倒をしてから、レクレーション等の参加を、こちらで判断して見送っていました。今回の音楽療法の参加も寸前まで本当は見送る予定でしたが、本人様が「いきたい!」と寸前に言っていただき意思を汲み取りリクライニング式のまま参加していただきました。そして到着するなり「一番前に行かせて!」と言いスタッフ総出で場所をあけました。今日は、最後まで近くでずっと見させてもらったんですが、ここ最近では見せない顔が見れました。」と言っていただきました。
その話を聞き、女性の手を握りなおすと、「次は治してから来ます」としっかり目を見て声を出していただけました。

反省会のときに、その話をさせていただくと、また別のスタッフ様に、「先生と会って、音楽療法をして元気になっていただけました。本当にありがとうございます。やっぱりパワーが貰えてる証拠ですね。」とも言っていただけました。

 

 

【学院長より】
お疲れ様です。
上海帰りのリルは、津村謙歌唱ですね?

リクライニング車椅子の方、大変残念ですね。
せっかく前向きに効果が出てきてたと思いますのに。

しかし、普通の高齢者は、寝たきりに成り認知症に向かったり、動こうとされなくなったりします。
とにかく効果が出ているのですから頑張ってください