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2016.12.28
特集

音楽療法士〜資格取得後の奮闘記 第四回「懐メロの刺激」

第四回音楽療法が終了しましたので、アセスメント、プログラム、記録等ご報告させていただきます。

アセスメント

人数は49名のご参加でした。女性が30名、男性が19名とほぼ前回と同じクライアント様が参加でした。始まる前に、スタッフ様と少し打ち合わせをさせていただきまして、「利用者様(クライアント様)には、音楽療法と言わず音楽教室とお伝えしている」、との事なのでクライアント様を誘導の際には「音楽教室が始まりますよ」と話をしてホールに誘導しました。顔を覗き込み挨拶をすると、覚えていただいた方が多数いらっしゃった様子で、最前列の方は一日中楽しみにされていた方ばかりでした。特に体調が悪い方や、機嫌の悪い方はおられず、席の誘導もスタッフの方々にお任せしました。前回、見えにくい方が多くいらっしゃったので、それだけ注意をしてスタッフにお願いしました。そして、少し早めの誘導をしていただけたので、5分早い13時55分からの実施でした。

プログラム

1.挨拶:自己紹介、天候の話等

2.準備運動:呼吸法、発声法の実施。発声法では、皆様の声が出ているか確認する為、前回と同じくゲゲゲの鬼太郎のモノマネを先ずは実施しました。声としてはよく出ていたので安心し、皆様の表情も和やかになりました。そしてもう一つ、発声法として、「ドレミファソラシド」を声に出していただきました。段々速くしていったり、音階を戻していったりと様々なドレミファソラシドを声に出しました。

3.季節の歌:『雨降りお月様』を歌唱し、その後、歌詞なしで、6月の曲や夏の童謡曲を歌唱。実施は、雨降り、てるてる坊主、みかんの花咲く丘、夏は来ぬを歌唱しました。
→今回の雨降りお月様はこれからの梅雨の季節を感じてもらえるように、梅雨の話を交えながら実施しました。そして雨降りお月様を今回ははじめに”犬棒かるた”の様に、歌詞を一部分隠して読んでいきました。クライアント様に、「この部分には何が入りますか?」と聞き、答えを出すのが難しい様子でしたが、一度唄ってみると、全員が隠した箇所を見ずとも思い出し唄えました。歌詞なしでの歌唱は、4曲とも一番は唄えました。二番は何でしたか?と聞くと、一部分の方々は思い出し唄えました。

4.歌体操:『かたつむり』を歌唱し、その後、体操を説明。今回は手遊びではなく、座りながらの簡単な体操を実施しました。体操は、上半身、主に腕を使った体操にしました。
内容としては、
①(お腹に手を置いた状態から)片手を前に出して伸ばす。→もう片方の腕を前に出して伸ばす。(両手)→初めに出した片手を曲げてお腹に戻す。→もう片方の腕を曲げてお腹に戻す。この繰り返しとして、腕の屈伸を注意ししっかりと伸ばしてもらうことを心掛けました。
②頭に両手を置く→肩→お腹→足→(逆から)足→お腹→肩→頭と体操を実施。

①では、とにかく両腕の屈伸をしっかりと注意しての実施でした。唄いながらの実施なので、皆様の声が薄れない事も注意しながらしていきましたが、特に出来ない事もなく、振り返れば、よくできていたかと思えました。②は、①の屈伸を踏まえての実施でした。本当は②の体操は予定だったのですが、①の出来が良かった為、急遽実施しました。②ももちろん唄いながらの実施でしたが、声が薄れる事もなく二つ同時にできました。

5.合奏:『茶摘み』を合奏。今回は、前回の合奏より少し難しい内容での実施でした。曲は本当なら5月の曲でしたが、天候も良かった為、急遽前日に変更しました。(本当なら”雨降り”を予定)
合奏での使用楽器は、鳴子、タンバリン、スズを使用しました。(鳴子以外の楽器は施設様の用意分)合奏の内容は、今回はリズムを付けての実施でしたが、前回、前々回は、振ると叩くだけでしたが、リズムを今回付けたところ、難しい様子もなく唄いながら楽器を使えました。スタッフ様から後で話を聞くと、「第三者から見て合奏はやはり皆様の表情が明るく変わり、声も自然と出ているので非常に効果的と思えました。」との事です。そして、前回、前々回は懐メロを使用しての合奏でしたが、今回は童謡曲で実施しました。童謡曲の方が、唄いながらの楽器使用ができており、盛り上がりも今までの中で一番良かったと思えました。一概にまだ童謡曲の方がいいとは判断出来ないので、次回の合奏は童謡曲、そして次々回の合奏は、次回の合奏結果で判断したいと思います。合奏結果としては、皆様の声と楽器のリズムとがしっかりと一致しており、今回もキレイに合奏ができました。

6.懐メロ:『青い山脈』と『港が見える丘』を歌唱。『青い山脈』では、歌手当てクイズを3択で実施しました。3択でのクイズだと皆様が反応しやすいので頭を使い考える事が前からよく見れました。そして、「青い山脈のイントロはどのような始まりでしたか?」と聞き、皆様が悩んでいる時に、音楽を流したところ、急に皆様の反応が変わり、寝たきりの方も目で反応をして、誰もがわかる程の音楽刺激がありました。スタッフの方も前からその瞬間を見ており、刺激にて反応された事が凄く驚かれていました。やはり、人気な曲だけに皆様の歌唱率や、声の大きさは今回で一番でした。寝たきりの方も唄わずとも手でリズムを取っており、合奏での刺激をそのまま引き継ぐことができました。『港が見える丘』は青い山脈程の人気ではありませんでしたが、女性の方には非常に人気の曲でした。声も出ていました。「動から静」にかけての曲としては、良かったかと思えました。曲の回想の説明を一生懸命聞かれる方が多く、”静”に持って行くとこができました。

7.体操:『仰げば尊し』をBGMとして一緒に座りながら簡単な体操を実施。何気無い体操なのですが、途中スタッフの方がある車椅子の女性の方のところに寄って行き、話をされていました。
終了後、スタッフの方に話を聞くと、いつも車椅子の女性が足を車椅子に乗せたままなのですが、足首を回す体操の時に自ら足を片方上げ、小さいながらに足首を回されていた。との事でした。
「入居されてから、足は車椅子に乗せたままで、足を上げて体操する姿を初めて見ました。ご家族の方も恐らくびっくりされると思います。」と話をしていただきました。

8.クールダウン:『夕焼け小焼け』を目を閉じながら歌唱し、ゆっくりと静かに終了。声は小さく、と話をしていましたが、一生懸命唄われる男性の方が数名おられました。ですが、静かにしっかりとクールダウンを取ってもらう為、歌唱後はあまり話をせず静かに終わりました。

記録、反省

・歌体操は初の実施でしたが、今回の内容にてどこまでが可能な体操範囲かがある程度ですが、わかりました。手遊びと体操を交互にプログラムとして取り入れてみるように心掛けます。

・合奏でのリズム取りは非常によくできており、「唄いながらリズムを取る」という事がほとんどの方ができています。寝たきりの方には事前にスタッフの補助がありましたが、楽器による手の感覚刺激は間違いなくできていました。童謡曲なら、唄いながらの実施が全員できるのかと思えたので、次回の合奏は再び童謡曲で実施予定です。

・懐メロでの音楽刺激は非常によくわかりました。音楽療法を4回目として、刺激がはっきりと出ていたので、なるべく次回からも刺激が出るように考えていきます。
→懐メロによる受動的音楽療法や、イントロクイズのようなプログラムも考えれます。(街のサンドイッチマン、湯の町エレジー、等)

・体操での女性の足首を回されていた事も、恐らく音楽刺激によるものでできていたのかと思えました。

反省点とすると、急遽曲を変更した為、歌唱曲が増えました。唄い疲れはありませんでしたが、なるべく曲数の限度を毎回決めておく方がいいかと思えました。もう一つは、音楽刺激が一つ今回ででてきたので、なるべくクライアント様に寄り添える曲(懐メロ、童謡曲どちらも)を準備しておくようなアセスメントをできるように心掛けます。

学院長より

ドレミファソラシドはイタリア語、日本の音階はハニホヘトイロハです。高齢者には出来るだけハニホを使いましょう。雨降りお月は2番のメロディーが完全に変わりますが、セラピストとしてそれを指示してから「難しいので1番のメロディーで2番まで歌いましょう」と言ってください。「犬棒カルタ」は最近の言葉で、このように言葉を縮めて言うようになったのは最近です。これは「いろはかるた」です。「雨降り」はひらがな「あめふり」です。歌いながらの体操は歌唱療法の分野で、高齢者の音楽療法はあくまでBGMを使って体操に専念してください。