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2018.12.11
特集

音楽療法士〜資格取得後の奮闘記 第二十八回「終戦プログラムでの回想と様子」

第二十八回特別養護老人ホームでの音楽療法が終了しましたので、アセスメント・プログラム・記録等を報告させていただきます。

 

[アセスメント]
全体の人数は、43名になります。
本日は、施設の関係で入浴介助が多いため、後列では入浴の入れ替わりがありました。
男性が11名、女性が32名になります。

到着すると、多くの方が座っておられ声を掛けさせていただきました。中にはストレッチャーの車椅子の方が寝ながら声を出されている姿もありました。(特に意味はなく、開始と同時に起きていただきました。)

 

[プログラム]

1.あいさつ
はじまりの挨拶、そして季節に関する話を少しさせていただきました。
それと同時に軽い質疑応答として本日の日付、外の天気とさせていただきました。

 

2.準備運動
先ずは呼吸法を実施。その後、発声法を実施しました。

→発声では、久しぶりにモノマネ(ゲゲゲの鬼太郎)を実施しました。
お腹を意識して裏声を使い…、と説明をし実施をするとほぼ全員がしっかりと発声ができているのが確認できました。
お腹を意識する、ということに対して最近では多くの方が、お腹を押さえながら発声する姿も増えました。

 

3.季節の歌
『夏の思い出』を歌唱。事前に曲の説明、歌詞の説明を実施。
歌唱後には質疑応答にて「夏の思い出」を聞きました。

→事前の説明では、前列で隣同士の会話で「尾瀬の歌やな」という声が聞こえました。
歌唱は問題なく、しっかりと声が1番2番と出ていました。
その後の質疑応答で、「皆さんは夏の思い出、小さい時にしていた事や、印象に残っている思い出はありますか?」と聞くと、「夏祭り」という声が上がりました。そして「8月やから盆踊りもあったね」ということも教えていただきました。そのときに急遽『炭坑節』を唄われる男性がいらっしゃり、急遽全員でアカペラで合唱になりました。
非常にここの地域では盆踊りの印象があったのか、手を叩きながら歌詞なしで唄われる方が多くいらっしゃいました。

 

4.手遊び歌
『浜辺の歌』を歌唱し、同時に手遊びを実施しました。
手遊びの内容は、
「グー→チョキ→右肘を触る→左肘を触る」
といった内容になります。

→歌唱自体に問題はなく、むしろ曲は非常に人気で声がよく出ていました。
補助していただいたスタッフ様にも利用者様が「浜辺の歌は懐かしい曲やな」と多くの声があったとのことでした。

手遊びでは、肘を触るという内容の体操はあまり無い動作なので間違える方が多くいらっしゃいましたが、一生懸命な姿が多く見れました。
そして、中には半身麻痺にて肘を触ることができない利用者様が、セラピストが声を掛ける前に自ら「肘をやめて肩を触る」という体操に変更しました。
可動領域を見る限りでは、肩を触ることは少し無理をされているようには見えましたが最後までしっかりと参加をしていただきました。

スタッフ様曰くこの方にはこれからのレクレーション時も可動領域を確認しつつ、できる範囲を探したい、とのことでした。

 

5.合奏
本日は8月のプログラムということもあり、
『月月火水木金金』を合奏にて実施しました。
合奏だけではなく、ここでも少しだけ質疑応答も設けました。

→先ず、模造紙をめくると「あー!」という声が非常によく出ていました。
やはり人気の曲ということもあり、合奏では非常に盛り上がりを見せました。
スタッフ様によると、合奏は「最近の中では一番よく楽器を動かしていました。」とのことでした。

そして合奏前に模造紙をめくった後すぐに、質疑応答にて「月月火水木金金の意味はどういった意味ですか?」と聞くと男性より女性の方の方が答えが多く「休みなく働くこと!」「土日返上すること!」と中列後列からも声を張って教えていただきました。
もちろん男性も答えていただけました。

合奏としては非常によく盛り上がり、前のめりになって楽器を鳴らす方や、首を伸ばして模造紙を一生懸命見られる方の姿というのも確認できました。

 

6.懐メロ
先ほどのプログラムも同様で、本日は8月のプログラムとして、終戦に関する曲を実施しました。『長崎の鐘』と『あゝモンテンルパの夜は更けて』を歌唱。
今回はスケッチブックにて説明時のキーワードを見せながら曲の説明、時代背景というのを一緒に説明をしました。


『長崎の鐘』では、説明時に前列の方が「これは昔、本であって長崎のお医者さんが書いた本なのよ」と教えていただきました。
「永井隆」という言葉をスケッチブックにて書いており、それを見せると反応が多く見れました。上記に書いた方も「そうそう!永井隆!」と反応を見せていただき、他の方も頷かれる方や「そうそう!」と様々な場所にて声が聞こえました。
そして、長崎の鐘の話、永井隆先生の話、原子爆弾の話、曲に合わせた説明をし、歌唱。
話の時にはどの方も頷き、「そうやった。」と声を出していただけました。
歌唱後に少しだけ曲の説明を再びしつつ、中には涙ぐむ方が前列には数名いらっしゃいました。

次に、『あゝモンテンルパの夜は更けて』を同じく説明、そして歌唱。
ここでも同じく説明時にスケッチブックを使い、キーワード(渡辺はま子、フィリピン…)を出しながら説明をしました。
説明時には、手で顔を覆われて涙される方や、説明中に「えっ!」や「そうなんや」という声も聞こえました。歌唱時も同じく涙しながら歌唱される方が目立ちました。
その後、一年に一度ということもあり、
「戦争に関する話」「終戦の話」とさせていただき、最後には「戦後73年の平和」ということで感謝の意を込めて頭を下げ感謝の言葉を述べました。

そして、戦後の日本を支えた曲、ということで説明後に本人曲を聴いていただきました。
曲は『リンゴの唄』です。
曲が流れた途端、いろいろな反応が見れました。
中には涙ぐむ方がいてたり、先ほどまで泣かれていた方が急に笑顔になって目を閉じながら曲を静かに聴いていただけたり、隣同士で当時のことを回想されて話をされていたりと、多くの反応が見れました。
途中で唄われる方もいらっしゃいました。

音楽が終了した後には、少しの説明を静かにさせていただき、クールダウンに向けました。

 

7.クールダウン
『夕焼け小焼け』をピアニカに合わせ歌唱。
静かに歌唱をし、静かに終了しました。

→ここでは声量も落とし、クールダウンをいつもより注意し実施しました。
特に大声で唄う方もなく、身体をリラックスした状態で唄っていただけました。
クールダウンをとり、その後は静かに終了しました。

 

[記録・反省]

・手遊び歌にて、『浜辺の歌』は非常に利用者様の中では人気の曲だったとのことをスタッフ様にも教えていただきました。今回の曲の中で
特に声が出ていた、とのことでした。
そして手遊びの内容としても、半身麻痺の方がしっかりと動かそうとすることを確認でき、肘を触ることができない方も少しでも動かして、最終的に自らの意思で肩を触るという内容に変更していました。
本当ならスタッフ様の補助と共に内容通り動かしていただくところでしたが、ここは利用者様の意思を汲みました。
利用者様の可動領域をアセスメントにて確認するべきところでした。ここはスタッフ様とセラピストとの事前打ち合わせ不足という反省点になります。

・今回の懐メロは、8月の終戦に合わせた内容になります。
事前打ち合わせにてスタッフ様には、興奮される方や感情的になる方がいるかどうか、そうなった時の対処法と考えていましたが、結果的にクールダウンが成功し、特に何事もなく実施できました。
以前、スタッフ様にお話を伺ったときに、系列のデイサービスでは終戦に関する話や戦争に関する話をしたところ、ある男性が怒って途中から荒れて音楽を止めたり、そのままデイサービス施設を出て行こうとした、という事例があったとの事で、かなり注意をしながら特養では実施しました。

・今回は説明が多いということに心配をしながら懐メロのプログラムを実施をしましたが、
スタッフ様との事前打ち合わせでも、途中で傾眠されたり飽きるような様子があるかどうか、と事前打ち合わせでは不透明でした。
ですが、説明中にはしっかりと目を開け、傾眠される事もなく聞かれる姿がほぼ全員にありました。説明をしっかりと聞かれ、そのまま泣かれる方や涙ぐむ方と、結果的にはしっかりと内容を聞いて回想をされていました。

・上記と同じ内容になりますが、
普段、頻回でお手洗いに行かれる方が今回は一度もなくしっかりと話を聞かれて参加をされていました。
説明時にお手洗いに行かれるかもしれない、とスタッフ様は考えていたようでしたが、その方はしっかりと耳を傾け一時間の中で一度も行かれることがなかった、とのことでした。
(後で聞いた情報では、そのときに失禁もなかったとのこと。)

・今回の懐メロの最後に聴いていただいた本人曲は非常に効果的でした。
今回はクールダウンをより意識した為、終了後に利用者様の声を聞くことが無かったのですが、後日スタッフ様によると「リンゴの唄がますます好きになった。」や「玉音放送を聞いた後に日本は…」と当時のことを鮮明に教えていただける方が多い、とのことでした。
しっかりと回想ができたことがわかりました。