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2020.06.30
特集

音楽療法士〜資格取得後の奮闘記 第三十四回「春ならではの姿勢」

第三十四回特別養護老人ホームすばるの音楽療法が終了しましたので、アセスメント・プログラム・記録等を報告させていただきます。

 

 

[アセスメント]
人数は、30名になります。
今回は施設内にて入浴される方が多くいらっしゃいますので普段より参加者が少なくなります。
それに加え、風邪気味や体調不良の方といらっしゃり不参加にもなります。
そこから入浴後の方がセッション中に来られ、最大33名になりました。

到着と同時に既に誘導が始まっており、誘導していただきながら準備セッティングをしました。その時に、入居者様が「もう桜の季節か。」という言葉や、「ああ!この先生か!」という隣同士の会話も多くありました。

開始は14時ちょうどになります。

 

 

[プログラム]

1.挨拶
はじまりの挨拶をし、その後模造紙の表紙に書いている桜とチューリップ、そして蝶の絵に関する話や質疑応答をしました。
「桜やチューリップはこの辺りで咲いていますか?」と質問すると、前列の方が指をさしながら「ここの入り口に赤と黄色のチューリップがありますよ。」と答えていただけたり、他にも「あっちの○○の方に大きな桜の木があります。」と答えていただけました。
するとここで、ある方が「今の桜は色が薄いよね。昔はもっと色が濃くて今の桜とは全然違うよ。」と隣の方に話をされていました。
各々が昔のことや今のことを思い出して、話をしていただきました。

 

 

2.準備運動
呼吸法・発声法を実施。
→呼吸は普段実施の内容でBGMを掛けながら実施。そして、今回の発声法では「横隔膜・滑舌」ということを重視し実施しました。
内容は、先ずは「ぱ」という言葉を何度も口をしっかりと開けて声を出して横隔膜を鍛えていただきました。
そして次に「らりるれろ」という言葉を舌を回しながら出していただきました。
反対から「ろれるりら」という言葉は少し難しい様子で途中から「ろれ……」と言えない方が多くいらっしゃりましたが、その出来ないことが自分で面白おかしくなり、笑われていました。
その後に「早口言葉」を挑戦しました。
らりるれろを多く入れた早口言葉を実施し、皆様が難しいであろう速さで一度披露をし、その後皆様に一緒に挑戦していただきました。
そのときしっかりと舌を回して言葉を出していただける姿がよく見れ、最終的にはできなくなってまた先ほどと同じように笑われているかたも多数名いらっしゃりました。

 

 

3.季節の歌
(今回は「花」に関する曲や話を多めに取り入れる為、)『花』を歌唱。歌唱後には曲の説明に加え、質疑応答も設けました。

→春の曲は非常に人気であり、皆様にとっても唄いやすいような曲でした。
声もしっかりと通っておりキレイな歌声が出ていました。
その後、曲の歌詞について質疑応答をしました。
「櫂のしづくも花と散る、の櫂とは何ですか?」と聞くと、多くの方が、手で船を漕ぐ様子が見れ各々が「これのこと」と言われました。それを見た隣の方が面白くなり笑われていました。その質問からはじまり、他にも「千金はいくらくらいでしょう?」「青柳とはどのような草木?」という内容にもしっかりと答えていただけました。
曲の歌詞の説明後には、
「花」についての質問をしました。
「春に咲く花は何がありますか?5種類教えてください!」と皆様に聞くと一斉に「桜!」「すみれ!」「菜の花!」「チューリップ!」と多くの声が出ました。
中には男性の方が「恋の花!」と手を挙げて言われると、他の方々が笑われていまして、それに対しセラピストも「私の場合年中ですね」と受け応えをしました。
そしてさらにその後、「菜の花に関する曲を覚えてますか?菜の花畠に入日薄れ~という曲です。曲の名前は何でしたか?」と聞くと、「ええっとな。何やったかな。」としっかりと考えられていました。
ある方が「唄ったら思い出す。」と言われ為、季節の歌2曲目として『朧月夜』を歌唱しました。(これは歌詞なしの音楽のみという形での歌唱になります。)
そして2番の最後に「さながら霞める、朧月夜」と唄われると同時に「そうや!朧月夜や!」とはっと皆様が思い出していただけました。その後には「菜の花」に関する質問もしました。

 

 

4.手遊び歌
『春の小川』を歌唱。同時に手遊びを実施。
手遊び内容は、今回は難しくさせていただきました。

→先ほどの花に関連し、春の小川を歌唱。
歌唱後には基本的な質問を実施しました。
「すみれ、れんげの花の色は何色ですか?」と質問すると、「むらさき!黄色!ピンク!」と様々な答えがでました。
そして手遊びに入りました。
手遊びは、
1→2→3→手拍子→手拍子→3→2→1
という内容になります。
内容が複雑の為、セラピストの手を見ながら実施していただく方が多くいらっしゃいました。
さらに2番では難易度を上げ、
片手が1→2→3、もう片手が3→2→1、→手拍子
という内容になります。
皆様が一生懸命考えられて指を出していただきました。
歌唱しながらというのが、また一段と難しく感じられ、できないことにずっと笑われている方が多くいらっしゃいました。
手遊び終了後に、説明として「できなかったら笑ってるだけでいいんですよ!それだけで効果はありますよ!」と言うと、さらに皆様が笑われたのと同時に安堵の表情も伺えました。
今回の手遊びは難しい内容で短く収めました。

 

 

5.合奏
『銀座カンカン娘』に合わせ、合奏を実施。
リズムは3種類使い、パターンは模造紙に記載。
→先ず曲の説明とリズムパターンを説明し、練習しました。
基本的にここの施設では合奏がキレイに鳴らしていただける印象と、合奏が楽しみの方が多いということから、今回は複雑なリズムパターンを取り入れたりと実施しました。
結果からすると、非常に一体感のあるリズムが出ており、止める・鳴らす・手を使うとよく出来ていました。
手の使い方、手首の振り方、音の出し方、寝たきりの方の可動領域と細かくスタッフ様にも確認していただき、成功しました。
どうしても寝たきりの方は、スタッフ補助ということになってしまうものの、曲の4番で一人で鳴らしていただけるかどうか、という確認もしていただきました。
途中で取り入れたり三三七拍子では、しっかりと止めていただくことを重視しましたが、ここでも全員がキレイに止めて、ピタリと音が止む事もできました。(これは初めてのことでした。)

合奏も非常に高度な内容にもなっており、少しこれからの合奏の内容にも工夫を加えて効果的な内容ができるようにしないといけません。

 

 

6.懐メロ
先ず、昭和22年の時代背景、出来事・流行などを振り返り、その後昭和22年の曲を歌唱していただきました。曲は『港が見える丘』『山小舎の灯』になります。


昭和22年の出来事を振り返るときに、模造紙に様々な内容を記載し、同時に質疑応答もしました。
・学校給食の実施。脱脂粉乳の提供
・古橋広之進→フジヤマの「?」
・ラジオドラマ「鐘の鳴る丘」
・ラジオクイズ番組「二十の扉」
などのキーワードと記載致しました。

先ず、脱脂粉乳について「飲まれたことある方いらっしゃいますか?」と聞くと、同時学生だったという方が手を挙げていただき、同時に「美味しくなかった。」「教室の隅で捨てていた。」などを教えていただけました。
次に「古橋広之進」について聞くと、「フジヤマのトビウオ!あの人は水泳で記録を持っていた。速かった。」と教えていただけました。
さらに「鐘の鳴る丘」については、「トンガリ帽子」という言葉など、多方面の方々が答えて回想していただきました。
その後に、当時の流行歌として、
「夜霧のブルース」ディックミネ
「星の流れに」菊池章子
と紹介をし、「?」平野愛子と記載しているところに皆様に質問をしました。
「平野愛子さんはご存知ですか?」と聞くと、ほとんどの方が「知らんなぁ。誰やろ。」と仰っていました。そこで曲「港が見える丘」の模造紙をめくると一斉に「あぁ!その曲か!」と反応がありました。
そして歌唱前に曲の説明、平野愛子さんについての話をしました。説明は一生懸命聞かれ、その後の歌唱もしっかりと声が出ていました。

次に、「?」近江俊朗と書いているところを説明すると、「湯の町エレジー!」と声が上がりました。ですが、湯の町エレジーではない、と伝えると「他に何かあったかな?」と声が聞こえ、「山小舎の灯」を見せると先ほどと同じように「あぁ!あった!あった!」と反応していただきました。
こちらも歌唱前に「米山正夫」「シベリア抑留」という説明をし、歌唱に入りました。
歌唱中に泣かれる方も居られました。

そして最後に当時の流行歌ということで、「啼くな小鳩よ」を聴いていただきました。
皆様が目を閉じて聴いていただきましたが、途中からどうしても唄いたかった方もいらっしゃったようで、空に歌詞を思い出して3番まで唄われていました。
他にも耳に手を当て集中して3番まで聴いていただける方もいらっしゃりました。

7.クールダウン
『夕焼け小焼け』を静かに歌唱。歌唱前に身体を少し伸ばして、同時に深呼吸もしていただきました。
そしてそのまま静かに終了しました。

終了後は誘導に入っていただき、同時にできる方には握手をしました。
その時に最前列の方が「昭和22年は私が6歳の時でした。」ということや「脱脂粉乳は美味しくない!」などの本日した内容をセラピストに教えていただき、そのまま隣同士で当時のことを振り返っている様子も伺えました。

時間は1時間ちょうどになります。

 

 

[記録・反省]

・今回は回想と同時に当時のことを教えていただける機会が多かったと思えました。
「今の桜は薄い。昔は今より色が濃かった。」と何気ない質問から非常に貴重な情報が伺えたり、
合奏時に、楽器を配布中に、ある女性の方が赤ちゃんの人形を抱いていらっしゃりました。
そのときに女性が「もう一個楽器をちょうだい。この子にも持たせてあげるの。」と楽器を赤ちゃんにしっかりと持たせて「(楽器が)きれいだねー!」とあやしている姿からスタッフ様方からは「子供をあやしている時に戻られている。」と教えていただきました。
普通の回想より、当時の風景が頭で思い出せたり当時の姿を思い出して赤ちゃんを触られていたりと多くの情報が見れたと思います。
回想に関しても、昭和22年という時代を振り返ることも二回目になりますが、以前とまた違う説明方法や以前紹介できなかったことを説明すると入居者様からの情報が自発的に引き出すこともできました。

・スタッフ様からの見解で、
「今回の春の曲は非常に皆様の表情や言動がイキイキしていた。春は明るい曲が多いからかそれが皆様にも現われていた。」とのことでした。
確かに、「花」「春の小川」を歌唱中に自ら手拍子や指揮を取る方が多い印象で和らいだ表情の方が多かったと思えました。

・3年実施になり、当たり前のようになっていたことですが、
はじめの誘導時、そして始まるまで待っている時にウトウトと寝ている方や寝そうになる方がいらっしゃりますが、音楽療法が始まると同時に起きられる方が多いことが今回スタッフ様に教えていただき気付きました。
そういった方も一時間音楽療法の時間はしっかりと起きておられ参加もいただきました。

・反省点では、
4年目を迎えたことからプログラムに変化をつけるように考えています。
懐メロでももっといろいろなバリエーションの曲や、懐メロ時のイントロクイズ、ひとりひとり回想ができる話(戦時中の話や、写真、物を使った回想)とできるかと思えます。
音楽療法に慣れてしまうとあまり意味が無いと思えますので、4年目は様々なことをやっていき、少し今までと違う回想や曲を取り入れたいと思います。
そしてショート利用の方も音楽療法に合わせて来ていただける方が多いということからその方々を対象にしたプログラムも(もちろん元から入居されている方も含めます。)考えたいと思います。